本書では文学作品が一般市民の手に届き始めるようになった初期近代(主に一六、一七世紀)から二〇世紀までのテクストに表出される規範的ジェンダーロールに焦点を当て、作者も含めて性別にかかわらずジェンダーロールに縛られる姿、あるいはそれと格闘して越境しようとする姿を、五人の執筆者がそれぞれ異なる文体や時代のテクストを用いて分析する。
序 章 ジェンダーロールの呪縛と越境(竹山 友子)
第一章 下層階級におけるジェンダーロールの曖昧性(前原 澄子)
――『西国の美しい娘』(第一部)のヒロインをめぐって――
第二章 すっぴん崇拝と初期近代の化粧談義(齊藤 美和)
第三章 同性への愛と罪の意識(竹山 友子)
――友愛とホモエロティシズムの狭間――
第四章 ヴィクトリアン・マスキュリニティの確立と男性による看護(西垣 佐理)
――『嵐が丘』を中心に――
第五章 女性の居場所と職業(中川 千帆)
――二〇世紀犯罪小説の看護師探偵たち――