はじめに
第一章 エリザベス・ギャスケルとシャルロット・ブロンテの交友(一)
一 ギャスケルの書簡に見る交友の初期
二人の友情をめぐって / 二人の書簡 / 円熟した小説家ブロンテと新米小説家ギャスケル /
『ジェイン・エア』が好きなのか、きらいなのか? / 「シャーリー」の作者への同情 /
ケイ・シャトルワース夫妻 / 「苦しむシャルロット・ブロンテ」像の発生 / 初対面--「ブロンテ物語」を書きはじめる /
「ブロンテ物語」のなかのパトリック・ブロンテ / 小説のような手紙の生んだ思いがけない余波 /
虚構のブロンテに現実に働きかける
二 ブロンテの書簡に見る二人の「交友」
ブロンテと手紙 / ギャスケルの好意を受けて / 小説家ギャスケルに対する小説家ブロンテの友情 / ギャスケルの接近にいらだつ / ギャスケルの娘たちへの言及 / 白己を語るブロンテの性癖 /
ラブレターで苦悩を語る / エレン・ナッシーへの手紙で / ギャスケルへの手紙で / 悲劇的ブロンテ像の発生源 /
ハリエット・マーティーノウの追悼文に見るブロンテ像
一 小説家エリザベス・ギャスケルの成長--ブロンテを知ることで
なぜブロンテに執着したのか / 博愛をテーマに--若き日のエリザベス・ギャスケルと夫の影響 /
ウィリアム・ハウイットとギャスケルの最初期の作品 / パターンにおちいる博愛の小説 /
ブロンテとの交友がもたらしたもの / 『荒野の家』--中流家庭の女の生活を書きはじめる /
『クランフォード』とシャーロット・ブロンテ
二 孤独なヒロイン、シャーロット像を完成させる
「ブロンテ物語」の空白期間 / 「ブロンテ物語」を再開する--『クランフォード』を書きおえて /
ギャスケルとジョン・フォースター / フォースター宛の手紙 / 孤独なヒロイン、シャーロット像の完成 /
ブロンテの結婚について語る
三 二人のその後
交際の中断--週刊誌の連載に追われて
一 伝記か小説か?
二 作品成立の背景
ブロンテの死を知る / 回想録の執筆を思い立つ / パトリック・ブロンテ、伝記の執筆を依頼する /
シャーロットの遺族たちへの警戒心 / エレン・ナッシーの協力 / さまざまな要素の混在する伝記
三 ハワース周辺の風土とヨークシャーの人身の気風について
辺境の地と住民の荒々しい気風 / ギャスケルの無原則な情報収集
四 パトリック・ブロンテ
語り手によるほめ殺し / エピソードが語る暴君パトリック / 父様の象徴としてのパトリック
五 シャーロットの少女時代
父に放擲される幼いきょうだい / 牧師の子女のための慈善学校 / 子供たちの創作 / ブロンテ家の老女中タビー /
ロウ・ヘッド女学校
六 弟ブランウェル
息子と娘の教育格差 / ミセス・ロビンソンとの不倫 / なぜ不倫事件の描写に熱を籠めたか
七 妹たち
エミリ・ブロンテ / ノアン・ブロンテ
八 シャーロット・ブロンテとカラー・ベル
女らしいヒロイン、シャーロット / 病弱な身体 / 内気さ / 父の家の狐独な娘 / セクシュアリティを持た
ないヒロイン / シャーロット・ブロンテとカラー・ベル
九 初版の出版から第三版の出版まで
初版及び第二版の出版 / 初版に対する関係者からの抗議 / 第三版の出版へ
一 絶賛する一九世紀の批評家たち
『アシニーアム』の書評 / 『スペクテイター』付録の書評 / 『サタデイ・レビュー』の異議 /
『フレイザーズ・マガジン」の書評 / 作家たちからの手紙
二 女らしいブロンテ像が書かれた背景
『ジェイン・エア』に対する保守層の批判 / エリザベス・リグピーの批評
三 伝説となるブロンテ姉妹
『シャーロット・ブロンテの生涯」の効果 / へンリ・ジェイムズのブロンテ神話批判
四 ブロンテの作品への評価が上昇するなかで
一九世紀末におけるシャーロット・ブロンテ人気の凋落 / シャーロットとエミリの評価が逆転する /
フェミニストによるシャーロットの再評価
五 ギャスケルへの非難
ジュリエット・パーカーからの批判 / バーバラ・ホワイトヘッドからの非難
第五章 「シャーロット・ブロンテの生涯』に見られる虚構の手法
一 はじめに
二 二人のギャスケル--信頼できない語り手と虚構を構築する小説家
三 父権社会の縮図として描かれるブロンテ家
四 幽閉のメタファー
五 食と飢餓のメタファー
第六章 女が伝記を書くと--『シャーロット・ブロンテの生涯』を書くエリザベス・ギャスケルの場合
一 一九世紀の英国社会と女性作家の活動
二 ギャスケルをとりまく社会
三 「シャーロット・ブロンテの生涯』の計画前後
四 女の資料収集法
五 伝記出版後
おわりに
注
初出一覧
年譜
参考文献
索引